「強くなるために戦う。それが常識だろぉがボケ!!」
「意味の無い強さなど、必要の無いものだ。」
(意味を成さない)乱闘
強さを求めるものが居る。
「そこどけ。俺がテメェら全員ぶっ殺してやる。」
強さを求めないものが居る。
「戦いは、何も生み出さない。何故理解しない。」
相反する者が、より多く戦う。そしてより多く生き、より多く死ぬ。
より多く、 生きたがり 、より多く、 死にたがらない 。
赤茶けたブレザー、色あせたブラウンの髪、長ジャージの下、紋白蝶色のネクタイ、乱れた襟、
赤い、ナイフ。
緑のトレーナー、亜麻色の髪、紫のズボン、うす青のキャップ、光るだけの眼鏡、
赤黒の、ナックル。
戦闘服。
煌く銀、舞う黒。ドブネズミ。
「さっさとバテろこのボケッ!」
「バテると勝てるのか?お前は。」
でたらめに動く銀、一触即発の黒。見ているだけの、ドブネズミ。
「ぁあ!?勝てるに決まってんだろが!」
「無理だな。俺は負ける前にヤルからな。」
「ったりめーだろがアホかお前!」
「お前と戦ってるから。多分、アホだな。」
赤くならない銀、守るだけの黒。
「光栄だと思え!お前は俺にヤられるんだよ!」
「ああそうか。よかったな。」
空を舞う銀、
「寝言は寝て言うんだな。ナイフバカ。」
微動だにしない黒。
銀とはナイフのことで、黒はナックルのことだ。あしからず。
「武器だけで勝ってきたわけじゃねぇよ!!」
「こっちは元からだ。」
さっきから戦っている赤茶の塊(ナイフを持っていた方)は、足利ナサオ(ナオ)という。
さっきから戦っているかもしれない緑の塊(ナックルの方)は、伊織ホタカ(イオリ)という。
両人は、名前と顔だけしか知らない(いわゆる顔見知り程度の)、全くの他人だ。
「死ねやイオリ!!」
「お前に殺されるほど、」
直進する、赤茶。
「強くないわけじゃない。」
ふらりと、黒は赤茶(つまりナオ)の顔面目掛けて蹴りを入れた。
ナオの鼻からは鼻血が出ている。イオリは冷めた顔をしている。
「…っ…眼鏡割ってやらぁっ!!」
「何だ。急にランクが下がったな。」
他人が何故戦っているかなど、聞くものじゃない。人はいつでも知らない他人と戦っている。世界戦争、政治戦争、受験戦争、試験だって高順位を狙って知らない誰かと戦っている。
だから、聞くものじゃないって。
ナオがイオリに蹴りを入れればイオリは叩いて避けたり、イオリがナオを殴ればナオはそのままイオリの隙をついて殴ったり。
現在、傷者1.ナオが鼻血出してる。
ナオが弱いわけじゃない。イオリが強いわけじゃない。ヤツラはいつもここで、会うたびにケンカ(?)してる。多分ケンカしてなきゃ生きていけないんだ。
2人が弱いわけじゃない。2人が強すぎるから、2人でケンカしてる。
だから2人の周りにはお飾り程度に死屍累々。いや、死んではいないだろうけど、戦闘不能か意識が無い。最初は10人ぐらい居たんだから。いや本当に。え?さっき傷者1って言った?ああ、そんな、2人以外の人間なんて、ほとんど戦っちゃいないで負けてるんだから、数えない数えない。元から2人のための戦いの為だったんだから。をーみんぐあっぷってやつ?ウォーミングアップ?
あ、ナオがイオリにやっと一撃かましたよ。口切れてる。
「…痛いな。」
「ったりめーだろがアホ!アホ!このアホ!」
「天然物阿呆に言われたくないね。」
ナイフはナオの傍に落ちてるはずなのに、ナオは気にもせず拾わない。
イオリも気にせず相手をしてる。…させられてるのかな。
「もう良いだろ。両方全治1週間程度の怪我はしたんだ。どっこいどっこいじゃないか。」
「ぁあ!?良いわけ無いだろが!どっちかが倒れるまでだ!!」
「俺はもう眼鏡割られたく無いんだよ。高いんだぞ。眼鏡。」
いつもこう。イオリは怪我すると直ぐやめる。何回か眼鏡割られてからは特に。
現にイオリは戦う意志なんて無い。1度ナオが、戦う意志を無くしたイオリに攻撃したけど、本気でヤル気が無いのか全く反撃も防御もしなかった。ヌイグルミみたいに飛んでった。
こうなったらイオリは死んでも拳を振らない。それが分かってるからナオも直ぐ諦める。
決着が付かない最大の原因。
現在、52戦0勝0敗52引き分け。47戦イオリにより強制終了。
何故この2人なのか。それは簡単だ。2人の周りに2人以上強いヤツが居ないから。この国の首都、喧嘩っ早い人間ばっかり住んでる街に、こいつら以上に強いヤツが居ない。
ナオは強くなる為に。
イオリは強者撲滅の為に。
こんなちっちゃな国で、特に意味も無く戦っている。
意味が無いのはナオだって知ってる。
有意義に戦ってるように見えるイオリだって解かってる。
でも、戦う。
だってこの世界には強と弱があるから。あやふやな関係が、キライだから。
強くなって、本当、どうするんだろう。おうさまにでもなるの?
わかんないや。ドブネズミだから。
「次こそ勝つからな!」
「次なんて来なきゃ良いのに。」
[END]
・・・・・あとがき・・・・・
何となく、戦闘物が書きたいなぁって。
何となく、ドブネズミがいいなぁって。
(C)ディライト
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