_化 物 の 憂 鬱_ 


 

綺麗なもの

僕の嫌いなもの

僕は綺麗なんかじゃないから

大嫌い

 

 

 

可哀想にね。

 

 あの子駄目な親もって。

 

僕等は幸せだね。

 

 両親から愛されているもの。

 

あのこ、可哀想。

 

 可哀想だ。

 

可哀想だ。

 

 かわいそうだ

 

カワイソウダ

 

 

 

違うよ。

僕は可哀想なんかじゃない。

確かにコレは僕の望んだ状態じゃない。

だけど

僕は愛されてないわけじゃないよ。

ちゃんと愛されている。

だから

違うよ。

違う。

違う。

違う。


 

チガウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に?

 

 

 

 

 

 

 


男は微笑んでいた。
勝ち誇った様にでもなく、僕を蔑んでいる訳でもなく。
僕を哀れんでいる訳でもなく。

 

「答えは?ボウヤ…」

 

 「水汲み如き大人数で来るわけ無いだろ。僕は小さな子供じゃない。」

 

男はそれもそうだと笑った。

 

「君は小さな子供ってほどじゃないね。」

 

 「…バケツ、かえして?」

 

「え?あぁ、ソレ、君のだったんだ?」

 

男は僕のバケツを吊り上げるとやっと僕に返した。
いったいこれを返してもらう為にどんだけ時間を費やしたんだろう。
無駄だ…。
僕はそれに水を汲むと何も言わず帰ろうとした。

 

「またね、ディア!寂しい子よ!」

 

僕は振り返った。
しかし男は何処にも居なかった。
森の木がさわさわと鳴っていた。

 

 

 

 

 

 
家に帰るとリビングでボードゲーム相手のフィオ・スディが待っていた。

 

「おはよ、ディア。」

 

 「おやすみ、フィオ。
 ぼくはねむいの。
 こんや(今夜)ね。」

 

フィオは苦笑いしながら僕に緑色のファイルを渡した。

 

「これ、エヴィーから。
 今夜もよろしくって。」

 

 「アヴィリィでしょう。
 なまえぐらいちゃんとよんだら?」

 

「別に良いだろ。
 俺はあいつが村長やってるってだけでムカつくんだからさ。」

 

フィオは僕の幼馴染みみたいな存在だ。
暇なときにボードゲームの相手をしてもらう。
世話焼きで、ちょくちょく僕の家に来ては雑談して帰る。
家柄は良い様で、従姉が村長をしている。

 

「…きょうは」

 

 「ん?どした?」

 

「きょうはペデストリアンにあったよ。」

 

 「はぁ?」

 

「へんな、やつだった。
 ぼくを“独り”だっていうんだ。」

 

 「…そっか…。
 …良かったな攫われなくて。」

 

「べつに。
 ぼくがいなくたって、だれもかなしまないもの。」

 

 「…そうかな…。」

 

「…そうだよ。」

 

フィオが帰ると僕はベッドに寝転んでクラレに話しかけた。

 

「ペデストリアンっていうやつにあったよ。
 なんでもしってた。」

 

 「タトエバ?」

 

「僕が“独り”だって事とかさ。」

 

クラレは何も言わなかった。
何も言わなくて良いと分かってたからだろう。
僕は闇に呑まれて眠った。
全部忘れたかった。

 


20090926若干文章訂正


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