化 物 の 憂 鬱  
 ‐Depression of an apparition‐



夜は歩いてはいけない
ナァナァと鳴く化け猫に攫われてしまうから

朝は川へ行ってはいけない
ペデストリアンに攫われてしまうから

僕を見てはいけない
僕は君を殺してしまうから

 

幼いころに、意味も考えずに歌っていた歌。
誰から教わったのかは覚えていない。

だからというか、この歌のように夜は歩かなかったし朝は川に行かなかった。
夜は真っ暗で本当に危なかったからで、朝に川へ行くと寝ぼけて川に落ちる馬鹿が良く居たから。
でも、こんな平和な田舎に最後のフレーズは少々恐ろしい。
子供のころは「僕」のところを「熊」にしたりしていたものだ。
どう考えても熊のほうが恐ろしいから。
でも大人達はそれを聞くとすぐに血相変えて飛んできて訂正させた。

 

『化け物の憂鬱』

 

今、僕は17歳だ。
馬鹿ではないので夜は平気で歩くし朝に川へ水を汲みに行く。
でもその歌の「僕」は未だに見たことがない。
大人達に「僕」を問うても顔色を悪くして首を振るだけで答えてはくれない。
夜はこんなにも明るくて美しいのに。
朝の川はこんなにも清清しいのに。
じゃあ、その「僕」っていうのも良いものなんじゃないのかな。

 

でも僕は見てしまった。

それを――――――

美しいだとか、

そんな甘いものじゃなかった。



 


 

 20080722若干文章訂正

 


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