・注意、本編より未来軸で話を書いています。
本来、ペデストリアンは通行人では無く、歩行者です。
ディアは意味が後でついたのですが、手紙で書く「親愛なる〜」の意味で、親愛なる人の意です。
人と化物と。
ディアは今日、最高潮に機嫌が悪かった。
昼間に村の丘の上にある教会で神父をしている伯父にたたき起こされ、年に一度の祭の準備を手伝わされて、帰ったらクラレが隣人に飼われている三毛猫と遊んだせいで家の掃除をしてまわる事になり、さあ寝ようと思った頃にはもう夕方で、家事をしろとクラレにこき使われて、村長の家に行って仕事を手伝って、しかもその仕事が厄介で時間がかかり、何時の間にか朝になっていたのだ。
そして今、ディアは機嫌最悪の様態で川へ水汲みに出ている。
ディアはいつも機嫌が悪そうな顔をしているのだが、本格的に機嫌が悪くなると冷たい感じの無表情になる。
背後からは邪念の様なオーラを発し、何がディアに触れても噛み付かれそうな雰囲気を出している。
ディアは水汲みと睡眠の事で頭がいっぱいで、その為か川べりで釣りをしているペデストリアンに気付かなかった。
一方、ペデストリアンはいつもと同じだった。
朝起きて、朝食用の魚を釣りに行く。
せいぜい、家の前の大きなブナの木の枝にアルフィが寝そべっていたことがムカついただけだった。
だからものすごい気迫で川に近づいたディアが怖かった。
「…おはよう。ボウヤ。」
ディアは気付かず川べりに近づいた。ディアは疲れで足元が覚束ない。
「危ないよ?」
ペデストリアンが忠告したにも関わらず、ディアは水を汲み、バケツを持ち上げようとした。
が、案の定、
川に落ちた。
川に落ちたにもかかわらず、ディアは気にしない様子で水から上がると、水の入ったバケツを持って帰った。
5メートルもせずにディアはバケツを取り落とし、其処に水をぶちまけた。
ディアは小さく舌打ちすると、更に不機嫌な顔になった。
川の側に行き、また水を汲もうと川べりに立った。
「おい、ディア。」
ディアはそこでやっと気が付いたらしく、濡れた絹が布擦れを起こしたように睨むと、ペデストリアンはディアの目が血走っていることに気付く。
その目はペデストリアンを確認しているわけではなく、其処に居る不機嫌な自分に話しかけた喋る生き物を確認した目だった。
「大丈夫か?」
「ウルサイ…」
ディアは水を汲むためにしゃがむとペデストリアンはまたディアが落ちないかと心配して近寄った。
ディアはペデストリアンをすごい形相でキッと睨むと、噛み付く様に怒鳴った。
「近寄るな!!五月蠅い!!僕に構うな!!僕は帰るんだ!!消えろ!」
ディアは水の入ったバケツをそのままペデストリアンに向かって振り回した。
それペデストリアンは難無く避ける。
「危ないよ。何をそんなに怒っているんだ?」
「五月蠅い!!良いから消えろ!!」
ディアの持っていたバケツが渇いた音を立てて落ちた。
ペデストリアンはディアの言葉遣いがいつもと違うのに気が付く。
ディアは俯く。目は空ろだ。
ディアの前髪がさらりと垂れる。後ろ髪もペデストリアンと初めて出会った時よりも長くなっている。
「何かあった?」
ペデストリアンは飄々と珍しいものを見るように聞いた。
ディアはペデストリアンを睨んでいたが、もう立てないぐらいに疲れていた。
ディアは膝をつくと、ディアはペデストリアンにこう言った。
「つりざお、ひいてる。」
ペデストリアンはそれを聞いて慌てて釣竿を取ると、ひき始めた。
ディアはペデストリアンに近づいていき、その背中に持たれかかると眠り始めた。
「え?あれ?ディアさーん?」
「五月蠅い。僕は不機嫌なんだ。黙ってろ。寝る。」
ペデストリアンはディアが寝不足で不機嫌な事が分かり、それが自分の背で寝ることだけで治るならと少しほっとしたが、自分が家に帰れるかどうか、びしょ濡れでディアが風邪を引かないかを心配するのであった。
オワレ。
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